まるで魚の頭だけ切り取ったような変な形、
ぼ~っとしたような間抜けた顔が
なんとも言えない魅力となっている「マンボウ」。
マンボウはかなり古くから
よく知られている魚であるにも関わらず、
自然界での観察や水槽での飼育が困難であることから、
その生態は謎に包まれていました。
しかし、近年野生動物にカメラや測定器をつけてデータをとる
「バイオロギング」の技術が発展してきたり、
水族館での長期飼育が可能となってきたことから、
その知られざる生態の一部が垣間見えてきました!
今回は、そんな知ってるようで知らない
マンボウの生態についてご紹介します。
マンボウの食べ物は「クラゲ」だけど…
マンボウは「クラゲ」が大好物というのは、有名な話ですよね。
ただし、クラゲというのは体の90%以上が水で出来ているため、
胃袋を開いてもほぼドロドロに消化された状態で、
どの種類のクラゲを食べているかはほとんど分からなかったんです。
そんな中で、マンボウにカメラを取り付けて、
エサを食べる様子を撮影するという方法で、
ついに水深約100~200mの深海にすむ
「クダクラゲ」というクラゲの仲間を主に食べていることが判明しました!
このクダクラゲというのは、沢山の小さな個虫が
繋がった体(群体)を持っているのが特徴です。
個虫の一つ一つは小さいですが、連結して群体となると、
時に40~50mもの長さになるんですね。
世界最大の動物であるシロナガスクジラが30mなので、
クジラを超える世界最長の動物とも言われています。
マンボウはちょくちょく深海に潜っては、
この恐ろしく長いクダクラゲをスポスポ吸い込んで食事をするんです。
人でいうと、恐ろしく長い一本のうどんをひたすら啜っている、
というイメージでしょうか。
ちなみに、クラゲだけしか食べないということはなく、
胃袋からは小魚やエビ類、軟体動物、浮遊性貝類など、
意外に幅広い食性を持っているんですよ。
また、水族館のマンボウは何を食べているかというと、
水族館にもよりますが、エビ・イカ・魚などをミキサーなどで
ミンチにしたものを丸めてあげています。
ぼ~っとしてるわけじゃない!?マンボウが水面に横になる理由
船乗りが水面で横になって浮いている
マンボウを目にすることがしばしばあります。
そんな様子から、呑気に寝ていると表現されてしまうこともあります。
しかし、この水面に横になる行動にもちゃんと理由があるんですよ!
マンボウに体温や潜っている水深を測る装置をつけてデータをとったところ、
一日に深海と表層を何度も行き来しているという結果が出ました。
また、体温も深海にいるときは下がっていき、
表層では上がっていくということが分かりました。
マンボウの食べ物は深海にすむクダクラゲというお話をしましたが、
実は深海は海の浅いところ(表層)に比べるとかなり水温が低いんです。
季節などによっても変わりますが、
表層が約17℃に対し、マンボウが潜る水深100~200mでは
10℃以下にまで下がります。
私たち人間も寒いと動きが鈍くなると思いますが、マンボウも同じです。
しかもマンボウは変温動物といって、自分で体温を作れず、
周りの水温の影響をもろに受けてしまうため、
長いこと冷たい水の中にいると寒さで体が動かせなくなってしまいます。
そのため、マンボウはエサを効率よく食べるために、
一日に何度も表層と深海を行き来して深海で冷えた体を表層で温めているんですね。
横になって浮くのも、おそらく太陽の光を受ける面積を広くして、
より効率的に温まろうとしていると考えられます。
つまり、日光浴をするために横になっているんですね!
まとめ
・マンボウの主なエサは、水深100~200mにすむクダクラゲの仲間。
・エサを食べるために、一日に何度も深海と表層を移動する。
・表層で横になることで効率よく日光を浴びて体を温めている。
まだまだ分からないことだらけのマンボウですが、
若い研究者たちの努力により少しずつ
その生態が解明されつつあります。これからの研究に期待ですね!