ASAPアニマルニュースです!
ヒグマと言えば、日本で最大の捕食動物です。
では、まず彼らは一体どれぐらい大きいのでしょう?
オスは体長1.9から2.3メートル、体重は120から250キロほど。
メスでも1.6メートルから1.8メートル、体重は150から160キロもあります!!
……小さな個体でも、人間のヘビー級の格闘技選手よりも大きいということですね。
記録が残っている個体の中で最大の体重を持っていた個体は、
なんと520キロ!!……こんな巨体が森をうろついているなんて……
遭遇してしまった時の恐怖の大きさは、想像もしたくありません。
さて。これだけ大きなヒグマですが、彼らは一体、何を食べているのでしょうか?
その食事には、意外な側面が存在しています。
ヒグマの食事の七割は肉以外!?
ヒグマの食性は、なんと肉中心ではありません。
彼らは栄養になりそうなものならば、およそ何だって食べるのです。
草も木の皮も、ザリガニや昆虫も、何でも食べることが可能です。
人間よりも食べられるモノの種類は多いようですね。
樹液だって、ヒグマは舐めてしまうんですよ……。
なんだか、以外と可愛らしい食生活じゃありませんか?
木の皮をバリバリとかじっているヒグマを見ると、癒される人だって出てくるかもしれません。
ハチミツを舐めているヒグマも可愛いかもしれません。
たとえ、それが体重200キロあったとしても……。
巨体の秘密は、雑食性!?
この雑食性があるからこそ、自然界から常に体を維持するためのカロリーを摂取できているとも言えますね。
何でも食べられるということは、あちこちにレストランが存在しているようなものです。
巨体を維持するには、常に食べ続けなければなりませんからね……。
純粋な肉食性であれば、200キロの巨体を作り上げることは難しかったかもしれませんね。
走り回る獲物を捕らえることは、疲れることですから。それだけでお腹が減ってしまいます。
雑食性のメリット。
常に栄養補給が出来るという以外にも、幾つかのメリットが存在しています。
もしも、肉しか食べられなければ?
肉となる獲物、たとえば鹿などがいなければ飢えてしまいます。
自分たちの生存に対して、一つの種類の動植物に依存してしまう状況は、ある意味ではリスクが高い。
その動植物の数が激減すれば、自分も飢えてしまうのですから。
それを避けることにもつながっているわけですね。
肉がなければ草を食べればいい。その行動が取れることはヒグマの生存確率を大きく向上させているのです。
雑食を支えるヒグマの奥歯!
ヒグマの頭骨の特徴はいくつかあります。パッと見で分かるのは、巨大な犬歯です。
いわゆる牙ですね。これが大きいです。
これは肉食性の特徴でもありますが、奥歯は似たような頭骨の形状を持つ
犬科動物と比べたとき、平坦で大きな臼歯となっています。
この平たい奥歯を使い、ヒグマは消化しにくくて固い植物をモグモグと咀嚼し、
細かく破砕することで消化および吸収の効率を上げているわけです。
犬や狐に比べたとき、ヒグマの奥歯は、より草食に適した形状となっているわけですね。
つまり、肉食も草食も可能な歯をしている……雑食用の歯なのです!
ちなみに。
牙のある獣の頭骨があったとします。骨しかないため、
それが一体どんな獣なのかを鑑別する必要が出たとしましょう。
そんなとき、ヒグマの奥歯の特徴により、その頭骨がヒグマのものかどうかを予測できるわけです。
季節によって食べるものが異なる?
シカなど一年を通して存在している獲物はいつでも補食していますが、季節により自然は状況を変えます。
ヒグマの食事も変わらざるをえません。
春は山菜を始め、植物をたくさん食べています。柔らかな新芽は食べやすいのでしょうか。
しかし、山菜が好きなのは人間も同じこと。ヒグマと山菜採りに来ていた人間が遭遇してしまうことも起こりえます。
夏になると昆虫類や魚を食べる量が増えます。食べやすい植物が減るからか、それとも昆虫類や魚を好むのか……?
個体の味覚に好き嫌いは存在しているでしょうが、夏に餓えて亡くなるヒグマは多いようです。
食べるしかないから、食べているのかもしれません。
畑のスイカなども食べ始め、夏は農業被害が拡大します。人間に近づくことはヒグマにもリスクですが、それを選ぶ。
それほど夏は餌に困っているわけですね。しかし、ヒグマによる死亡事件が起きることは、この夏の時期は少ないのです。
北海道の畑は広いので、人間と遭遇してしまう確率も低いのかもしれませんし、畑にいる時点で、作物を食べています。
つまり、空腹の度合いが少ないからかもしれません。
秋は植物を多く食べます。ドングリなどもある時期で、豊かな食料事情になるわけですね。
冬眠に備えて、とにかく食べまくる時期となりますが、
そのため場合によれば行動範囲も拡大し、人間と遭遇することも増えます。
どんな時に人間との遭遇が増えているのか?それはドングリ不足の秋なのです。
ドングリが実を結ぶ数が減れば、ヒグマは餌を求めて人里近くまで行動範囲を拡大するしかないということですね。
ドングリが豊作であれば、ヒグマとの遭遇ケースは大きく減ります。
冬眠しない個体もいる!?
一部のヒグマは冬眠することがありません。
北海道では近年、シカが増えているため、
そのシカを餌にする個体は、冬眠しなくても餌が食べられるわけですから。
シカを好み、シカを狩るのが得意、あるいはシカが多くいる土地であれば、
冬眠という選択肢を選ぶ必要はないようです。
冬眠しないヒグマもいるなんて、怖い気がしますね。
肉食に偏向している可能性もありますし、何より飢えてもいるでしょうから。
人間と遭遇してしまった時は危険なケースになるのかもしれません。
冬眠しないヒグマは肉食を好むのか、狩りが得意な生粋のハンターなのかもしれません。
全体的には肉食から草食に移行している。
明治期の個体の骨と、現代の個体の骨を比較することで、その事実が明らかとなっています。
骨に含まれる炭素や窒素を調べることで、肉食由来の原子なのか、草食由来の原子なのかが判断されるわけです。
環境によって原子の同位体の比率が変わりますからね。その比率を調べることで、食性も判断することが出来ます。
草食化した理由はオオカミの不在?
一般的にヒグマは積極的に狩りを行いません。
疲れるからか、獲物に逃げられたらエネルギーの無駄になるからか……。
狩りが上手くなければ、あるいは狩りに適した環境でなければ、
狩りで食料をまかなうことにはリスクがあるのです。
では、かつてのヒグマが肉を多く食べていた理由は?
オオカミたちの獲物を横取りしていた、
あるいはオオカミたちの食べ残しを漁っていたからだと考えられています。
オオカミが滅びた以上、そういった食事は出来なくなります。
その結果、ヒグマはより多くの植物を食べるようになってしまったのかもしれません。
ヒグマの存在を、日本の環境は祝福していない?
日本でヒグマと言えば北海道に生息しているイメージであり、現在で言えばそれは確かに正しいのですが……。
一万年ほど前の地層においては、本州、四国、九州の土地からも化石が出土しています。
かつては日本のあちこちに、ヒグマが生息していたようですね。
しかし、彼らは滅んでしまった。
北海道以外のヒグマが絶滅してしまったことには、様々な理由が考えられます。
深刻な病気が流行った。強力なライバルが現れた。気象の変化に対応できなった。
遺伝的な多様性が失われた結果の衰退なのか。もしかすると、人間に狩られてしまったのか……。
様々な理由が予想されます。そこが考古学的な好奇心をくすぐってくれますよね!
とにかく。理由が何であれ、化石は教えてくれています。
日本ではヒグマの生息地域が、一万年前に比べて減少している……。
……ヒグマは強く巨大なイメージなのですが、日本の自然環境は、北海道以外での彼らの生存を許してくれませんでした。
何故、強い種であるはずの彼らが滅びてしまったのでしょうか?
……生物学的な一般論では、高コストの動物というものは滅びやすくもあります。
巨体ゆえに多くの食料を求めることになりますが、
その食料を確保することが出来なければ?……
ヒグマの食性を並べてみると、彼らの巨体は必ずしも生存に適しているとは言いがたいように思います。
ヒグマは生態系の頂点に君臨してはいますが、
その生態系の変化に大きな影響を受けやすい繊細さも持っているようです。
適者生存、強いものではなく環境に適応した者が生き残る。自然界の摂理を体現しているような生き物ですね。
まとめ。
ヒグマは雑食性である。
肉よりも植物を多く食べている。
冬眠しない個体もいる。
オオカミの絶滅で草食化が加速した説がある。
一万年前は日本中に生息していた。
その生態は環境の変化に大きく左右されている。
次回もASAPアニマルニュースをお楽しみに!