犬の特徴は、何と言っても人間になついてくれることですよね!そこが犬の魅力あり、可愛さですから!
では、何故、犬はあんなにも人になついてくれるのでしょうか?……もちろん、それにも理由があります!
全ての動物は遺伝子によって、姿やその能力、あるいは行動方針などを決定づけられているわけですが……。
犬たちがヒトに懐いてくれる理由も、どうやら遺伝子に秘められているようなのです!
遺伝子解析の発達により、その秘密が少しずつ解明されています。
今回は、犬の特徴を決めてくれている遺伝子たちを皆様にご紹介。
その遺伝子の名は、GTF2IとGTF2IRD1。
……なんだか、カッコいい感じがしますね!ロボットの名前みたいで、個人的にはワクワクしますよ。
さて。これらが、犬特有の『人懐っこさ/高度な社交性』に影響を及ぼしていることが、近年の研究で分かってきました。
犬たちの中でも、特別に人に懐いてくれる甘えん坊な個体には、
この GTF2IとGTF2IRD1の変異が強く見られることも発見されています。
GTF2IとGTF2IRD1ってナニ?
これらの遺伝子なのですが、実は人間にもあるんです。
人間の場合、それらの遺伝子に異常があることで発生する、ウィリアムズ症候群という発達障害が起きたりします。
このウィリアムズ症候群は『自閉症の対極』 と呼ばれることもあり、
エルフのような独特でチャーミングな顔つきや、『人懐っこさ』を特徴としている症候群なのです。
このウィリアムズ症候群と同様に、2つの遺伝子の変異は、
犬の『人懐っこさ/社交性』を強化することに機能していることが分かって来ました。
ウィリアムズ症候群と類似する傾向ですね。狼よりも犬の方が可愛らしいし、より人間になつきます。
GTF2IとGTF2IRD1の変異が多いほど、犬は社交的な傾向が顕著になり、なつきやすくなる……
つまり、人間の伴侶動物として適した性格になるわけですね!
どうして、犬のGTF2IとGTF2IRD1には変異が蓄積されているのか?
犬の祖先は狼であることが知られていますが、現在の狼には、GTF2IとGTF2IRD1の変異が多くあるわけではありません。
GTF2IとGTF2IRD1の変異は、自然環境で生きていく上では、淘汰の対象となっていると考えられます。
これらの遺伝子が変異していると、野生環境での生存に適しているとは言えない可能性があるわけですね。
それでは、祖先である狼には存在しない変異が、なぜ犬には多く発生しているのでしょうか?
それには、人間の意図的な介入があったことが考えられています。
不利な遺伝子が残る理由とは?
自然界には環境による淘汰と、それぞれの種族の性的魅力に依存する淘汰が存在しています。
前者は分かりやすいですよね、寒い地域では寒さに強い者が生き残り、そうでない者は亡くなってしまう。
後者は少し性格が違います。それぞれの種において、繁殖の主導権を持つ性別の趣向が反映されるという淘汰です……。
分かりやすいのは、オス鹿の角の大きさなどですね。あれは大きいほど、メス鹿にモテますから。
小さな角のオス鹿は、子孫を残す確率が少なくなるわけですね。
メスにモテなきゃ子孫を残せない……それこそが性淘汰という自然界の仕組みです。
GTF2IとGTF2IRD1の変異は、自然界において排除されているということは、
少なくとも狼については、これらの変異は環境による淘汰、もしくは性淘汰の対象にあるわけです。
何らかの理由で自然環境で亡くなりやすくなっているのか、
あるいは、この変異を持つ狼は異性にモテずに、繁殖の機会が失われている。それらのどちらかなのでしょう。
もしかすると……狼の美意識に、犬らしさは合わないのかもしれません。
…… GTF2IとGTF2IRD1の変異は、自然界では不利かもしれない。
それなのに、狼の子孫である犬には、これらの変異が存在します。
これは自然淘汰に反している傾向なわけですね。
自然の摂理に反した現象。つまり?……この世でそれが起きる理由は、
ほぼ一つだけ。『人為的な介入』が予想されるわけです。
古代人は『変な狼』を選んで繁殖させた!?
こんな風に考えられています。
GTF2IとGTF2IRD1の変異を先天的に持った狼が、古代人に接触しました。
古代人は、その人懐っこさを有して、なおかつ他の狼よりも可愛らしい『変な狼』を気に入ったのでしょう。
『変な狼』も高い社交性のために、人と共に行動することが苦になりません。
一緒に狩りをしたり、食事を分け与えてもらったりしたら、尻尾を振ってよろこんだのかも?
有益だったからか、あるいは意外と役立たずだったのかもしれませんが……とにかく、
肝心なのは古代人が『変な狼』を気に入ったであろうということですね。
人間の介入が犬を作った?
古代人は自分たちに懐いてくる『変な狼』を繁殖させたのでしょう。
狩りのパートナーとして?野獣対策の護衛として?……あるいは単純に可愛かったからかもしれません。
とにかく、気に入ったものですから、家畜として増やそうと考えたのでしょう。
そのことが、純粋な自然環境では淘汰される遺伝子の変異を蓄積することになったという考え方です。
古代人たちは『変な狼』と普通の狼の異性を交配させたのかもしれませんし、『変な狼』の子を捕まえて来たのかもしれない。
もしくは、同じような行動を取っていた別の『変な狼』と交配させたのかもしれません。
とにかく『変な狼』の傾向を持つ個体を集め、交配を繰り返して行ったのでしょう。
そうすることで、GTF2IとGTF2IRD1の変異を持つ『変な狼』たちの数を増やすことが可能となります。
最初は突然変異という自然発生であったGTF2IとGTF2IRD1の変異を持つ『変な狼』は、
こうして古代人の手により、その数を増やしていったのです。
変異した遺伝子を集団内に定着させる。『進化』という行いを、人為的に強いた最初期の例の一つなのかもしれません。
増えた『変な狼』たちこそが、現代の犬の先祖になった……
それがGTF2IとGTF2IRD1の変異から見た、犬のご先祖様観というわけですね。
※犬の誕生については様々な説があります。
研究対象として、身近かつ世間の好奇心が集まりやすいこともあり、様々な研究や考え方がある分野ですから。
今回はあくまでも、GTF2IとGTF2IRD1の変異という観点からの説になります。
GTF2IとGTF2IRD1の変異の良いところ、悪いところ?
良いところは人間に懐くことでしょう。まず可愛いですし、
コミュニケーションが取れるということは、訓練を施しやすいということでもありますから。
悪いところは、人間に依存してしまうところでしょうか?ペットとしては好まれもする特徴なのですが……。
……たとえば、同じ訓練を施した狼と犬がいたとします。
二匹が訓練の成果を披露する場に、人間がいると
、狼は人間を無視して成果を出しますが、犬は人間を本能的に観察してしまい、タイムロスを発生させる。
人間を常に意識して頼ろうとする、動物としては珍しい習性が犬にあるのです。
こんな習性なんて、人間にもありませんよね。
他にも判明している犬の遺伝子の特徴!
IGF-1遺伝子の変異も、狼と犬の違いに寄与しています。
この遺伝子は IGF-1……インスリン様成長因子の発現を司っているわけですが、
このインスリン様成長因子の役割とは?……簡単に言えば、様々な細胞の『成長』を司っています。
狼に比べて犬が小さいのは、この遺伝子の変異により、成長が阻害された結果なわけですね。
この遺伝子変異を持つ犬同士を交配することで、その変異を増えていくと、小型犬が作られます。
遺伝子の知識が無くても、小型の犬同士のカップルからは同じような小型の犬が、
あるいは、より小さな犬が産まれることがあります。
そのことは、昔の人々も経験的に知っていたでしょうから、
知らず知らずのうち犬種の確立に古くから用いられていたわけですね。
SLC1A2とCOMTの変異で活動性が変わる?
これらは脳内の神経伝達を司る遺伝子たちですが、
これらのに遺伝子のわずかな変異が、行動的、あるいは、攻撃的であるかに関与しているという報告もあります。
SLC1A2の解析の利用により、その犬が持つ活動性の多い少ないが予想出来るかもしれません。
遺伝子を採取できた瞬間に。たとえ、それが生まれたばかりの仔犬であっても。
その技術の利用方法に、盲導犬の適正度の判定に使えるのではないか?……という研究もあったりします。
大人しい遺伝子を持つ犬は、しつけに向きますよね。
じゃあ、そういった遺伝子の特徴を持つ犬を、盲導犬にスカウトすれば効率的かもしれませんから。
他にも神経伝達物質の受容体に関わる遺伝子が、犬の活動性や攻撃性に関与していそうだということが分かってきています。
ドーパミンに体が鋭敏に反応すれば、怒りっぽく活動的になるかも!……という考え方ですね。
その考えは、どうやら当たっているようです。
脳内で情報を伝達する物質の分泌量や、その物質による反応性。
それらがどの程度のものかを遺伝子の種類から予測することで、
その犬に向いた役割などを予測する未来も来るのかもしれません。
犬など伴侶動物たちの品種改良に、遺伝子分析を導入する……。
効率的で合理的ですが、そこまでしたいかどうかは個人の趣味に依存するでしょう。
……ですが、遺伝子解析の進歩は、病気の解明や治療につながります。
犬だけでなく、人の医療の進歩にも貢献してくれているわけです。
犬が人類に貢献してくれている、無視できない分野ですね。
これから多くの病が、遺伝子の解析により発生原因や治療方法が見つかって行くのでしょう……
犬という動物は、本当に人類の偉大な友なのです。
まとめ
犬にはGTF2IとGTF2IRD1の変異が多く、これが多くあるほど、人間に懐きやすい甘えん坊の性格になります。
狼にはそれらが少ないことから、人間の介入により、その遺伝子変異が犬に蓄積されていったと考えられる。
犬の体格の大小を決める遺伝子も発見されている。
犬の活動性や攻撃性を決める遺伝子も見つかっている。